取次屋ストーリー

<後編>爆弾処理班だった私が、取次屋を始めるまで

wakemi

爆弾処理班と呼ばれていた頃

赤坂に住んでいた頃、
私はヘルプデスクの仕事をしていました。

トラブルの多い部署の相談に乗り、
怒りながら電話してくる人の話を聞き、
状況を整理して解決していく。

そんな仕事を続けているうちに
こんなふうに言われるようになりました。

立てば猛獣使い
座れば変人担当
歩く姿は爆弾処理班

気難しい人の相談役や
少しややこしい出来事の仲裁を
任されることが多かったからです。

怒っている人の話を聞きながら
本当に困っていることを探す。

人と人のあいだに入って
話をほどいていく。

そんな役回りを
いつのまにか担っていました。

子どもが生まれて考えたこと

その頃、娘が生まれました。

出産を機にいったん会社を離れ、
その後コロナ禍になり
家計のこともあって復職することに。

ただ、
子育てと仕事の両立は
思っていた以上に大変でした。

家事と育児と仕事で毎日バタバタです。

わけ美
わけ美

夫と大揉めしたことも
一度や二度ではない!!

それでも考えていました。

この子は
どんな社会で生きていくんだろう。

そして私は
どんな働き方を
見せていくんだろう。

会社員として働くことが
嫌いだったわけではありません。

むしろ
チームで仕事をするのは
好きなほうでした。

でも、自分の役割として
一番やりたいことは
会社の中には
あまりありませんでした。

人と人のあいだに入って
モヤモヤをほどいていく。

そんな役割は
どこの会社にも必要そうなのに
仕事としては
あまり存在していなかったからです。

向いていない仕事に就いた

黒電話

出産後、再就職したのは
外資系企業の問合せ対応スタッフ職でした。

応募倍率は20倍。

正社員。
フルリモート。
福利厚生、退職金。

「これで家計も安心だ」

と思いました。

ところがこの仕事、
ものすごく向いていませんでした。

その会社では
とにかく スピード命。

1件でも多く電話を終えること。
0.1秒でも早く対応すること。

チームで成績を
競い合う文化でした。

1回の電話で受ける質問は
基本 1つだけ。

別の内容は
いったん電話を切って
もう一度かけ直してもらう
という仕組みでした。

私は

「え、ちょっと待って
まだ聞きたいことあるんですけど…」

というお客様の声を背に

「申し訳ありません。
その件はまた別でお電話いただく形になります…!」

と案内する仕事に
なかなか慣れませんでした。

頭では理解できても
体がついていかない。

心の中では

「うわー!向いてない!」

と叫びながら
毎日電話を取っていました。

早く終わらせるより

「で、何が困ってるんですか?」

と聞きたくなるタイプだったからです。

指名された日

そんなある日。

社内でも有名な
「対応が大変なお客様」から
電話がかかってきました。

多くのオペレーターが
苦戦しているお客様でした。

私はいつものように
話を聞きながら
状況を整理していきました。

すると最後に
その方がこう言いました。

「次もあんたに頼むわ。
あんたは、俺がやりたいことを
分かってくれる。指名するわ」

私は

「ありがとうございます。
指名制度はないんです」

と答えました。

電話を切ったあと、
何だかじーんとして私は思いました。

ああ、そうか。

私は
速く処理する人ではなく、
少し時間はかかるけれど
話の奥にある
「本当にしたいこと」を
見つけるほうが得意なんだ。

操作サポートのつもりが

赤い糸クズ

向かなさすぎる会社を
逃げるように離れたあと、

私は、オンラインで
PCやスマートフォンの操作を
サポートする仕事を始めました。

新しいツールやアプリに
苦手意識を持つ人は多く

「操作を教えてほしい」

という相談がよく来ました。

でも話を聞いていると
困っているのは
操作だけではないことも
よくありました。

仕事のこと。
家族のこと。
人間関係のこと。

モヤモヤした気持ちを話しているうちに
「本当はどうしたいのか」が
少しずつ見えてくる。

そして整理されると
人は動き出す。

操作サポートのつもりが
いつのまにか

モヤモヤ整理の時間

になっていることも
多かった気がします。

取次屋のしごと


振り返ってみると
私はずっと

人と人のあいだに立つ役

をしてきたのかもしれません。

給食の時間に
先生に言われて
食べるのが遅い子の隣に座っていたこと。

家族のあいだで
話を取り持っていたこと。

会社では
「爆弾処理班」と呼ばれながら
人のモヤモヤを整理していたこと。

そして今は
おしゃべり代行「となりの取次屋」として
人と人のあいだに入り
言葉や気持ちを取り次ぐ仕事をしています。

世の中には

「本当はどうしたいのか」

うまく言葉にできないまま
止まってしまうことがあります。

でも
誰かが間に入って
少し整理するだけで

人はまた
動き出せることがあります。

お隣さんに
お醤油を借りるくらいの気軽さで

人を頼ったり
頼られたり。

そんな
「おたがいさま」の関係が
自然に広がる社会を
次の世代につないでいけたらと思っています。

そのために私はこれからも
取次屋として活動していきます。

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おすそ分け

3分でできる小さな診断

なんで毎回こうなるの?

同じことで傷ついたり
うまく伝えられなかったり
いい感じだったのに流れが止まったり。

それは
子どものころから使ってきた
「心の道具」が動いてるだけかも。

🟡 座布団タイプ
役に立とうと頑張りすぎる

🔴 ラジカセタイプ
伝えるのをあきらめる

🟢 湯呑みタイプ
失敗を避けようとする

🟣 お菓子缶タイプ
甘えたい気持ちをしまいこむ

なんで毎回こうなるの?
の正体がわかります。

わけ美
わけ美
おしゃべり代行
Profile
家族や身近な人とのやりとりで 「ちょっと困ったな」というとき 間に入って言葉や気持ちを取り次ぎます。 親子・パートナー・職場—— うまく伝わらない どう言えばいいかわからない。 そういう場面で、一緒に考えます。 下町の長屋みたいな距離感で 「ひとりで抱えたくないこと」を 誰かに渡せる日常を目指しています。 大阪芸術大学放送学科卒。 司会・ヘルプデスク歴15年以上。 聞くこと・間に入ることが、 ずっと仕事の真ん中にありました。 好きなもの:演劇、着物、豚汁。
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